eスポーツの産業化を目指すREJECTが描く未来とは。資金調達の裏側。
2021.11.02
2021年5月24日(月)に開催された、GAINWINGS CONFERENCE D2C NEXT。Session3では、D2C運営におけるチーム作りをテーマに、株式会社re COO・麻生 泰央さん、株式会社chipper 代表取締役・十時 悠径さん、株式会社hypex 代表取締役・河合 幸太さんの3名に議論してもらった。
D2C事業を運営する中では、マーケティング、CRM、製造、物流など多くの機能が必要。ブランドの世界観を保全しつつ、事業拡大を考えた際、どのようなチーム作りをし、どのように社外を巻き込むべきなのでしょうか。
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Speaker
麻生 泰央さん(あそう・やすお)
株式会社re COO
新規事業開発支援会社を経て2018年10月に株式会社reを共同創業。現在はオリジナルパッケージ印刷プラットフォーム「canal」を運営し、パートナーサクセスを主に担当している。
十時 悠径さん(ととき・ゆうけい)
株式会社chipper 代表取締役
技術系高専を卒業後、大学ではデザインを専攻し、大手IT会社にコンサルタントとして就職。その後、マネジメント経験を経て株式会社chipperを創業。これまで累計1,000社を超えるD2C立ち上げ・リブランディング支援を行う。 EC、D2Cにおけるブランド立ち上げ・コンセプト策定、新規事業企画開発・インキュベーション研修、販売戦略立案まで一気通貫したモデル構築を行う。 TechとArtへの深い知見から、データ(左脳要素)×アート(右脳要素)をかけ合わせながら、事業コアに“Why=なぜこの事業を行うのか“を据えた上での、ブランド・コンセプト設計、組織構築を得意とする。
河合 幸太さん(かわい・こうた)
株式会社hypex 代表取締役
「組織を多様に、チームをしなやかに」をコンセプトに、採用広報事業へ取り組む。組織の内外の情報の非対称性を減らすことにより、支援会社の採用力を向上させている。アラン・プロダクツにてインターンとして会社売却を経験後、月間150万利用者数を超える医療・美容のWebサービスの事業責任者、兼経営陣として組織の成長を牽引。成長組織におけるOKRを利用した評価制度の構築や外国人、ジェネレーション、女性、LGBTQ+などのダイバーシティ・マネジメントに尽力。新規事業の立ち上げに従事したのち、香港法人設立、アルメニアでのスタートアップ立ち上げへ挑戦後、株式会社hypexを創業。グラナダ大学マーケティング学部、立命館大学国際関係学部卒業。
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河合:今回のテーマが「内製と外注」ということなのですが、社内で作るか外を巻き込んでいくのか、どちらが一概にいいということではありませんが、とはいえ「ここは採用すべきなのか」「ここは外のプロに任せた方がいいのか」と悩むポイントがかなり多いのではないかと思っています。今日はその点について、事例やNGポイントなどを伺えたら嬉しいです。
まずは、そもそも内製と外注における基準をどう考えるかについてお聞きしたいです。麻生さんはいかがですか?
麻生:今回のテーマを伺ったときにまず浮かんだのは「ブランドによって基準の正解は変わるな」ということでした。最終的にどのようなブランドにしていきたいかが、大きな基準になると思います。つまり、そのブランドの強みや差別化できる部分、コアになるものがどこになるのかによって、それを実現するうえで最適な形が内製・外注のどちらになるかが変わるということです。
僕は前職、インキュベーションという、ブランドや新規事業立ち上げの支援をする会社にいたのですが、その時代もまずそのブランドが「どのようなブランド像を描いているか」から考えていくことが大切であることを感じました。
十時:とてもよく分かります。D2Cは単純なECと違い「どれだけ熱量を持って取り組めるか」が肝になってくると思っているので、内部で世界観をどれだけ突き詰められるかなど、コアな部分をどれだけブラッシュアップできるかという観点がとても必要になると思います。
例えばマーケティングだけが切り離されているなど、意外と縦割りの組織になってしまっていることが多いと思うので、そこをどのように繋げるかは意識していくべきです。それができないと、ブランドの世界観が伝わっていなかったり、短期的な戦い方になってしまったりという問題が起こってしまうと思います。
河合:一時的には機能しても、チームとしては離れてしまうということですね。
十時:そうですね。「チーム」という観点がとても重要で、外注を使うにせよ、どのようにチームに巻き込んでいくかをしっかり考えると、やりやすくなると思います。
麻生:Session2のときにも同じような話をされていましたよね。横同士の連携が取れないと、フィードバックのスピード感やフィードバックを受けてからの対応が上手く動かなくなるので、マーケティング単体で見て「外注すべきかどうか」ではなく、「ブランドがこうなったらいいよね」という部分から、「チームとしてどういう人がどれくらいいたらいいのか」「その人たちは採用できるのか」というように広がっていく方が、「できそう?できなさそう?」で判断するよりも、ブランドとしての可能性が広がっていくと思います。
河合:では、具体的に「ブランドのコア」っていうのは、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?
麻生:弊社が事例として紹介させてもらっている、女性向けのパーソナライズビューティーブランドの「FUJIMI」さんを例に説明させてもらいますね。
代表の藤井さん曰く、日本人が海外の方に比べ、サプリメントに対して抵抗感がある理由のひとつにパッケージがあるのではないか、と考えたそうなんです。日本では、青汁などの健康食品の延長線上としてサプリメントが捉えられていると感じた彼女は、デザインを海外のものを参考に作り込み、新しい立ち位置を掴んでいこうと考えたということでした。「自分が使いたいブランドが何か」と考えたときに、それがFUJIMIさんはデザイン面が大きかったということだったのだと思います。
河合:デザインや包装など、コアバリューになり得るものはさまざまありますよね。十時さんは具体例は何かありますか?
十時:フランスにワインの畑を、兵庫に日本酒の蔵を持っている酒蔵さんが、ひたすらに「本物とは」を永遠と突き詰められていて。なので僕は今、一緒に「本物とは」を研ぎ澄ませていくプロセスを共にやっている段階なんですよね。そこで最終的に行き着いたのが、「思っていることをいいことも悪いことも本気で語る」ということ。
例えば、日本酒の越境において、ラベルを偽装されて売られているという問題がありました。そこに対する問題提起をFacebook上で本音で投げたとき、広告を一切回さなくてもかなり拡散されたんですよね。170回シェアされ、最終的に香港とフランスのメディアに取り上げられました。
方法論にフォーカスすると数字だけを追ってしまいがちになってしまいますよね。本音で向き合うことだけが全てではないですが、一歩立ち返り、自分たちが何を売っていくのかを向き合うことが重要だと思います。
河合:結局、「プロダクトの価値って何なんだっけ?」というところに行き着きますね。
では、コアが決まったら次はそれを内外含めどうやって実現するのかということになると思いますが、その点はどのように考えていけばいいんでしょうか?
麻生:コアが見つかってきたら、生産や物流などといったそれぞれの機能や流れに落として考えていくと思います。
最初は、よほど人材を採用できていない限りは、実行という面で外注を選ばざるを得ない企業が多いのではないでしょうか。ただ、それも丸投げでいいということではなく、十時さんが先ほどおっしゃっていたように、外注先のパートナーさんとどう信頼関係を築き、彼らをどうチームに巻き込んでいくのかがファーストステップとして大切になると思います。
外注先のパートナーさんに対して、「自分たちがどういうブランドを作りたいのか」「どんなことをパートナーさんに期待しているのか」をしっかり話すことで、実際に形にするうえで必要な専門的な知識を元に、違う実現方法を提案してもらえることもあるかもしれません。
どういうところを目指しているかを言語化し、一緒に目指していくプロセスが一番最初に重要になってくると思います。
それは、パートナーさんとの話だけではなく、内製の場合も同じこと。スケールしていくブランドを目指すのであれば、どちらにせよしっかり伝えて巻き込んでいくことが必要だと思います。
河合:大前提として、内製にせよ外注にせよ、一緒に作り上げられる人じゃないと厳しいということが最初にあったと思います。
プロダクトのコアバリューを言語化し、共有することで一体化して進んでいくべきということはもちろん、チームや組織のところにもコアバリューが必要になってきますよね。組織がそもそもどんな専門性・バリューを持っているのかという部分と繋げて考える必要はあるのでしょうか?
十時:まさにそうだと思います。
弊社のCOOが、前職にてマナラ化粧品さんをお手伝いしていたんですよね。外注先との関わり方が素晴らしくて。単純に機能だけで考えると、パートナーさんが下請けのような感覚になってしまいがちなのですが、マナラさんはパートナーシップのような考え方を大切にしているので、チームとしてお互いに補うような関係性を築けているんです。
そのうえで、「ビジネスを成功に導くための重要な7つの要素」という軸が大切なのかなと思います。
河合:詳しく伺ってもいいですか?
十時:D2Cという文脈で落とし込んでいったときに、大前提としてのビジョンや情熱といったコアになる強みの部分や、リソース・提携先・戦術・ファシリテーションなど、7つの要素に分解できると思っていまして。全部がうまくワークしていると成功します。反対に、ビジョンがなかったら組織全体が向くべき方向がわからず混乱してしまいますし、揃っていてもプランができていなかったらチームとしてスタートできない、ということになってしまうわけです。そういう点で、この観点は結構重要だと思っています。
河合:この要素に当てはめたとき、自社の「ある」「なし」を判断する基準はあるのでしょうか?判断するのは主観なのでむずかしいのかな、と思ったのですが……。
十時:マーケ先行型だと前半3つが抜け落ちていることが多かったり、反対にクリエイティブ重視で進もうとしているブランドさんは前半は強いけど後半4つが弱かったりと傾向はあります。
前半3つと後半4つと分けて考えたとき、入れた方がいい人材の指向性があると思うんです。前半3つがまだ定まっていない段階では、組織全体をファシリテートしていくことが重要。そのフェーズは、問題提起型で物事を考えられるような人材を上手に採用できるとうまく進みます。反対に後半4つを固めるフェーズは数値目標を定めて落とし込む段階なので、課題解決型などアウトプットを得意としている人材をチームにアサインすると、具体的な抜け漏れが見えてくると思います。
河合:これ、とてもわかりやすいですね!自社でも実施したくなりました。
河合:先ほども少し触れてはいましたが、続いては内製と外注を考える基準について、具体と抽象を行ったり来たりしながら話せたらと思います。
麻生:基準の前に、「いつから考えたらいいのか」という話から触れられたらと思います。弊社では、ブランドさんから内製・外注についてや、オリジナルパッケージを始めるかどうかについての相談を受けた際は、「ブランドを始める前で検討するのがいいのではないか」と提案しています。
というのも、「経済的に問題なく運用するには、どれくらいの原価率で進めていくべきなのか」「今の商品価格でやっていけるかどうか」は、後戻りできない部分だから。なので、ブランドが始まる前や始まってすぐなど、早い段階がいいと思っています。
そのうえで、パッケージや物流は、経済的な側面・リソース的な側面が入ってくるので、それを考えると、無理が来るタイミングの前、これから一気に伸びていくのが見えてきた段階で話を考えた方がいいと思います。
もちろん、コアを詰める前にリソース的な側面で外注しなければいけないこともあるはずです。その場合はそこの段階で、外注先とどのように関係作りをするのかが大切になってくると思います。できるだけ余裕を持ったタイミングで検討できるのが一番ですね。
十時:先ほどは機能軸ではない話をしましたけど、一方で、専門性をどのように取り入れていくかという点では、早い段階で意思決定をしていくことは確かに必要かもしれないですね。
河合:専門性を取り入れる際、自社の専門性がない状態で、パートナーさんがあるかどうかはどのように見極めるのがいいのでしょうか。
麻生:大きく2つあると思っています。
ひとつは、ひたすら相対化し続けることです。大前提として、1社だけだと、彼らの中での常識や持っている設備があるわけです。コアな生産の部分は横同士では話せないこともあるので、彼ら自身も自社を相対化しきれていない部分があるんですね。もちろん1社だけと話して関係性を深めることも大事ですが、その業界内を知っていくという点では、さまざまな会社の話を聞いて探ることは大切だと思っています。
とはいえ、複数社の話を聞くのは時間がかかるし大変ですよね。そこでもうひとつ大切なのが、信頼できるブランドからの紹介。パートナーさん選びをするうえでは「担当者の方がどれだけ融通が効くか」「自社のことを理解し動いてくれるか」が重要。担当者さんこそ、専門性を動かすエンジンになるわけです。自分たちに合った担当者さんを効率よく探すには、信頼できる・近い・目指したいブランドの担当者を紹介してもらうこと。これこそが一番安心できる手法だと思います。
十時:相対性を高めることは大切だと僕も思います。プラスで、事業さんとの最初の打ち合わせでやってしまいがちな「質問がクローズドになること」に注意すべきです。悩みが決まっている状態なので、クローズドクエスチョンの中でどのような回答をするかというコミュニケーションになってしまう。そうすると、見えているのが、本来発揮できるポテンシャルの10パーセントである可能性があるわけです。オープンクエスチョンで、どのような考え方をしているのかや、どんなことができるかを引き出してあげるのは重要だと思います。
河合:確かに、提案させてあげることって大事ですよね。最後に、本日のまとめに移っていけたらと思います。
本日のお二人の話を聞いていて、「伴走します」と言いつつ静的な動きしかできなかったなという反省点が浮かんできました。外から課題を見つけてくれたり、一緒にプロジェクトを走ってくれたり、チームと一緒になるってそういうことなのかなと感じました。それが会社の中にあるのか外なのかというのが、内製と外注の基準になるということですよね。
麻生:内製・外注の問題は、具体的で現実的な問題であり、どのブランドさんもどこかでぶつかる課題なのかなと思います。そうなったときに、目の前のことだけどうするかを考えるのではなく、中長期的に「どうするんだっけ?」と立ち戻る機会として、内製・外注を選択するタイミングを使っていくのが大事なのではないかと思いました。
十時:感覚が近しいお二人とお話しできたことで、より一層、チームを作っていくことが重要だと改めて感じました。
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